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国際日本学部

国際日本学実践科目の履修生が株式会社JERAの本社を訪問しました

2024年12月24日
明治大学 国際日本学部

2024年度秋学期の「国際日本学実践科目D」で実施している企業本社訪問の3回目は、東京日本橋に本社を構える株式会社JERAでした。12月17日の午前、同社の執行役員(企業価値創造担当)の藤家美奈子さんよりお話を伺い質疑を行いました。
JERAは、東京電力と中部電力が出資して2015年に設立された企業で、発電、及び電力・ガスの卸販売事業のみならず、燃料の安定確保のため燃料上流・調達から国際物流などにも事業を行う、総資産額7兆円を超える世界トップレベルの電力事業者です。発電量では日本全国の約三分の一を占めますが、最近、英国の石油大手BPと洋上風力事業を統合することを発表し、同社の「ゼロエミッション2050」という目標の達成に向け再生エネルギーの拡充にも取り組んでいます。
お話しいただいた藤家さんは、東京電力入社後、技術開発本部の「原子力研究所ヒューマンファクター研究室」においてヒューマンエラーをいかに防ぐかを検討するお仕事に就きましたが、同社のイノベーションリーダー研修を受講したことを機に横浜支社などで勤務、その後、JERAの設立の際に監査役に就任して、現在はダイバーシティ&インクルージョンを具体的に進める責任者として、JERAが設立した特例子会社のJERAミライフルの社長も兼務されています。
藤家さんは広報も担当されていますが、JERAはその発電総量に比べると知名度が低く、2019年の知名度はわずか6%にとどまっていたとのことです。その後、2020年からプロ野球のセントラルリーグのタイトルパートナーとして協賛するなどの活動を行った結果、知名度は現在、20%を超えるようになりました。
同社は、現場で働く社員の大半が男性であるということもあり、早くから女性の活躍を中心に据え、ダイバーシティ・インクルージョンに取り組んでいます。現状、女性の比率は社員で約11%、管理職で7%というレベルにとどまっており、社内において女性はマイノリティということですが、それに焦点を当てた第1フェーズを経て、現在は「ダイバーシティ&インクルージョンなカルチャーづくり」へと移行、そのため経営層と社員、社員と社員のフラットなコミュニケーションを重視した取り組みを進めているとのことでした。藤家さんご自身も内外の事業所に出向いて、この取り組みを伝えるお仕事をされているとお話されていました。
エクイティ(Equity:公平性)を向上させる取り組みでは、Femtech(FemaleとTechnologyをかけ合わせた造語で、女性が抱える健康課題をテクノロジーで解決する製品やサービスなどを提供する企業)への投資なども進めているとのことでした。
加えて障がい者雇用を積極的に行うために、2021年にJERAミライフルを設立、その経緯や具体的な取り組みなどもご説明いただきました。特例子会社であるミライフルの障がい者雇用分を親会社であるJERAに合算して実雇用率を算定できることから、ミライフルは障がい者が働ける業務範囲を拡大し、雇用者数を計画的に増やしているとのことでした。横浜火力発電内に設けられた横浜ストロベリーパークでの運営、イチゴ栽培の作業、発電所花壇の整備、制服管理の業務に加えて、イチゴを活用したお菓子の製造販売なども試行しているとのことでした。
当日、参加した履修生からは、社内におけるダイバーシティ&インクルージョンの浸透度と理解を得るための取り組み、現場社員とのコミュニケーションの取り方、外国人材の採用・活用、障がい者雇用拡充の見通しなどに加えて、ゼロエミッション実現に向けた新技術の採用、風力発電の拡充、原子力発電の将来可能性などエネルギー問題全般にわたる質問も出され、藤家さんより分かりやすいご回答をいただきました。
ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みは、社員とその家族が幸せになり企業価値を高めるミッションと、誰もが機会を得て自らの成長と貢献に期待が持てるビジョンを実現するためのものであり、その結果、イノベーションが自然に創出される状態をつくり出して行きたいというご説明でしたが、社会の幅広い活動を支える公益性の高いエネルギー企業の取り組みとして共感できるものでした。
 (兼任講師:井上洋)